柚 だ よ り   Y U Z U C O L U M N
11月下号
<五感を刺激してくれる興味深い場所を探索する連載コラム「五感漫遊記」。今回は、「感覚ミュージアム」をたずねました>

宮城県玉造郡の「感覚ミュージアム」を体感しました。

 秋のある日、宮城県玉造郡岩出山町に昨年オープンした「感覚ミュージアム」をたずねました。

「感覚ミュージアムでは、眠っていた感覚を呼び覚ます引き出しをたくさん用意しています」と、パンフレットにあります。

「現代の情報社会では、あまりにも視覚のはたらきに左右されることが多いように思われます。一方で視覚が制限されたときの研ぎ澄まされた感覚や匂いを伴う過去の記憶など、日常生活の中で見え隠れする感覚というものもあります」



 
眠っていた感覚を呼び覚ます引き出しとは何か?

 興味津々で、「感覚ミュージアム」の中へ。
 
「闇の森」というコーナーには、薄暗い空間が広がっている。
いつものように視覚に依存はできない。入館者は聴覚、足の裏と手の触覚などを使いながら、そろそろと足を踏み出す。
 一歩、二歩と手すりをたよりに、闇の中を進んでいく。だんだんに、暗闇の中で身体を動かすことになじんでいくのです。
 途中で、手すりにはさまざまな素材、金属、皮、布、ビニールなどなどが使われていることに気付き、指先で感じ分ける楽しさを発見していくことになります。壁に空けられた穴に手を入れ、中の物体を手で「鑑賞」するコーナーもありました。

 たとえば「香りの森」というコーナ。
 白くふんわりとした、植物のつるのようなものが、高い天井からたくさんつり下がっています。近づいてじっと見ると、それは「紙縒(かみより)」でつくられていました。
 紙という素材を使っているせいなのでしょうか。
 人工的に創作された空間でありながら、生命の複雑さを感じました。訪ねた者を包み込むやわらかさがありました。
 身体が浮遊するような、ほっと息をつくような、何十分でも立ち止まっていたいような、心地よいスペース。
 「森」の中に立つ、白い九本の柱。その柱には穴が空いていて、顔を入れると草の香りやアユの香りなど、さまざま匂いが漂ってきます。匂いに触発されて、遠い日の記憶が、立ち上がってくるようです。
 私たちが使うことを忘れていた嗅覚を心地よく刺激してくれる装置。他にも感覚を際だたせる仕掛けが、随所にありました。これから体感する方のために、これ以上の詳しい説明は控えさせていただいて……

 音を聴く装置

 感覚ミュージアム館長の千葉啓子さんが、こんなお話をしてくれました。
「この岩出山町という場所には、まだたくさんの自然が残っています。空気も澄んでいるし、木々もしげり、鳥もさえずっている。それなのになぜ、こんな人工的な施設が必要なのか、という質問を受けることがあります。
 私自身も、この施設が含み持つコンセプトの深い意味を理解するまでに、一年ほどの時間がかかりました。
 今はこう考えています。
 このミュージアムの空間を感覚で体験して、また日常へ戻ると、今まで何気なくやりすごしてきた、たくさんの音、匂い、味……を、自分の感覚を使いながら発見することにつながる。
 日常の中で、息をしていたその空気が実はいい匂いがしていたことに気付いたり、耳を傾けていなかった鳥の声が聞こえてくるようになったり……。
 だから私はこのミュージアムを、『感じる森の入り口』と位置づけています。『感覚で感じることの心地よさや大切さが、凝縮され、増幅されている場所』だと

 ちなみに「感覚ミュージアム」の運営管理は、NPO法人「オープンハートあったか」が町から委託されているそうです。「物質文明に頼りすぎて衰えた人間の感性を呼び覚まし、生きがいを感じて人生を送れるような福祉社会の実現を目標に、感性福祉を追求する」NPO法人だそうです。
 地元に住む市民自身が運営し、かつ施設を使う側でもある。まさに「五感・感覚を使うことをテーマとした施設」にふさわしい運営の仕方だと思いました。

*その他にも、カスケードドラバース、アースガーデン、ハードドームなど、感覚を際だたせるいくつものエリアがあります。


感覚ミュージアム>
〒989-6434
宮城県玉造郡岩出山町字下川原100番地
TEL:0229-72-5588
FAX:0229-72-5577
http://www.kankaku.org/


随時掲載コラム
「ネコも歩けば棒にあたる〜 一を聞いて十を知るの巻」


  イラスト・ワカバヤシチカ

ぶっそうな世相。
大不況に史上最悪の失業率、狂牛病にテロ……。
誰だって天に祈りたくなる。神だのみになっちまう。
そんな世の中で、お茶の間を席巻するのが「安倍晴明」。
ご存じ、平安時代に活躍した陰陽師だ。
1000年という時を経て、夢枕獏の小説やマンガからブームに火がついた。京都の晴明神社は参拝客で溢れ返り、映画「陰陽師」も大ヒット中。
映画では主人公・晴明役に狂言界のプリンス・野村萬斎が抜擢され、これがハマリ役と大絶賛されている。しかも脇役に真田広之や小泉今日子らが揃う。監督は『お受験』などを撮った滝田洋二郎。これじゃ、話題にならない方がおかしい?
    *   *   *
安倍晴明は天文道や陰陽道を学び、気象や吉凶を、自在に占う。未来を的確に予測する「神秘力」を持つ。
一つの予兆を得たら、知識や論理的な推測のみならず、第六感や直感を総動員して、「十」を知ってしまう。その「原因」と「結果」の道筋は、本人しかわからない。いや、本人にもわからない。
晴明にまとわりついた、さまざまな「わからなさ」「闇」「謎」。それが、いっそう現代人の心を惹きつけるのだ。
さて、渦中の晴明さんですが、実はネコに関係ある土地に生まれたということを、ネコ好きのみなさんはご存じでしょうか?
『晴明伝記』などの資料によると、その出生地は茨城県の明野町猫島。
 こんな伝説も残されている。
茨城県明野に流刑された陰陽師・賀茂保憲は、ネコの大群に取り囲まれた。立ち往生していると、突然そこに現れた一人の子ども。不思議な能力を発揮して、ネコたちをすばやくコントロールし追い払った。
保憲はとっさに「普通の子ではない」と見込み、弟子に。それが安倍晴明……という逸話から、「猫島」という地名になったとか。
    *   *   *
安倍晴明の生い立ち伝説に、ネコがからむ。私には、それが「ただの偶然」とは思えない。
ネコの鋭い洞察力。しなやかな身のこなし、そして神秘的なパワー。そうしたイメージが、陰陽師・晴明にどこか投影されてはいないだろうか? 二重写しになってはいないだろうか?

ネコと超能力の関係については、以前からさまざまな指摘がされてきた。コツコツと研究も続けられてきた。
デューク大学の超心理学研究室では、J・B・ライン博士が「ネコの超常行動」についての調査を行っている。
たとえばネコたちが地震の前触れを知る危機予知能力について。飼い主の不意の帰宅を察知する力について。長距離帰巣の謎について。
あるいは、コップの中にエサを入れ、密閉して匂いを遮断し、透視させるESP調査を行った結果、「ネコはそれを当てる能力がひじょうに優れていることがわかった」(『ネコのこころがかわる本』 マイケル・W・フォックス著)。
だが、いまだにその理由の方は、解明されていない。
とにかく、人間が感じ取ることのできないような微細な状況の変化や時間の変化を察知する能力が、非常に優れていることはたしか。
微細な手がかりから、全体を読み解いてしまう能力。一を聞けば十わかってしまう力を、ネコたちは備えている。

ネコが「エネルギー場」を嗅ぎ取っている、という説もある。
たとえば仕事をしている最中に、あなたのネコが机に上がってきて、書類の上に長々と横たわってしまうことがよくあるはず。
前出書によれば、ステファン・ガスキン博士は、「一人がエネルギーを放出しもう一人がそれを受け取っているとき、ネコはそのエネルギーの流れに平行に横たわる。ネコにはエネルギー場やその方向を感じとる能力がある」とか。
ネコたちが「超能力」を持っているかどうか、真偽のほどははっきりしない。が、この不穏な21世紀、世の中が混沌とすればするほど、「一を聞いて、十を知る」パワーが注目され珍重されることは間違いない。 
ネコたちへの熱き視線は、今後ますます強まっていくだろう。安倍晴明をめぐるブームのように。(月刊『Cats』2001.11)



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