柚 だ よ り
Y U Z U C O L U M N
9月号
<五感を刺激してくれる興味深い場所を探索する連載コラム「五感漫遊記」。今回は向島百花園の「萩のトンネル」です>


 萩。 
 草かんむりに、秋と書いて、萩。
 9月の下旬に盛りを迎える、白や濃桃色の繊細な花です。



 マメ科のこの植物、細いしなやかな1.5メートルくらいの枝が、幾重にも幾重にもしだれる。
 その様子は、暑い夏が過ぎてひんやりとした秋にぴったりの、はかなげな風情です。
 
 萩というこの花、日本人が昔からとても愛してきた花です。万葉集に登場する花の中で一番多い(141首)ことでも、よくわかります。
 
 そのしだれる枝を上手に活用して作った「トンネル」があることを、ご存じですか?
 「萩のトンネル」。
 前回8月の「柚だより」の中、「虫きき」でも登場した「向島百花園」では、秋のこの時期にだけ、萩でできた30メートルの長さの不思議なトンネルをくぐることができます。 



  向島百花園とは……
 造ったのは佐原鞠塢。文化元年(1804)のこと。
 季節の花々が楽しめるこの庭園は、茶人や文人・墨客の著名人が集まるようになりました。加藤千陰・村田春海・亀田鵬斎・大窪詩仏・獨山人(大田南畝)・酒井抱一等にことのほか愛顧を受けたといいます。永井荷風も、浅草散歩のついでに、よく遊びに来ていたとか。 

 季節というものを楽しむ「五感漫遊」には、格好の場所の一つです。
(所在地・墨田区東向島3丁目18番3号)




随時掲載コラム
「ネコも歩けば棒にあたる
  〜屁をひって尻つぼめる〜」
    イラスト・ワカバヤシチカ

みなさんは「ネコのおなら」をご存じでしょうか?
 かく言う私も、それなりに長い時間ネコとの共同生活を続けてきたけれど、「ネコのおなら」には、残念ながらいまだに出会ったことはない。


幸運?にも、「ネコのおなら」にたびたび遭遇するという私の知人によれば、「ベッドの上でプッとおならをするでしょ。するとね、フッと一瞬知らん顔をするの。そのあとすぐに、ヒュッと逃げてっちゃうのよ。なにも、怒りゃしないのにね。かわいいでしょ」とのこと。
 その時の私の感想。「人間って不思議で勝手なものだな。誰か他人が自分のベッドの上で屁なんてしようものなら、とてつもなく嫌悪を感じてしまうのに、愛するネコ様なら、カワイイで済んじゃうんだからね」
 たしかに、ネコという家族の一員がしでかしたこと、そんなに目くじらを立てなくてもいいとは思うけれど……     
     ◇     ◇     ◇
 ところで、この「おなら」なるものの正体とは?
 実は、食事をしたり水を飲んだりするときに口から一緒に体内に浸入する空気なんだそうです。だから、特別に汚いものではない。
 ところが、ヨーロッパの近代社会によってつくり上げられた「マナー」なるものが、「おなら」や「ゲップ」を「下品なもの」としたことから、ことさら汚い礼儀しらずな行為として意識されるようになっていった、そう言えるでしょう。
  もっとも、日本の江戸時代には、「おなら」でいろいろな音を奏でて、音楽まで演奏する「放屁術」なんてものまであったとか。暮らしもにおいも、その当時にはさぞや豊かなものだったはず。
 
 その「おなら」、我慢をしているとどうなるか知っています?
 たしかにジッと頑張って我慢し続ければ、放屁は回避することができる。人前でおならをするのなんて、やっぱりイヤだもの。
 では、その「おなら」はどこへ消えてしまうのか?実は消えてなくなりはしない。
ジワジワと体内に吸収されていき、少しずつ血液にとけ込んで、一部は肺の中に入り、なんと口から放出されるのだとか!

 ようするに「おなら」は、尻から出るか、口から出るかのどちらか。いずれにせよ、私の中から外へ出て行くことには変わりはない。たしかに、その出方やにおいは違っているけれど。
 でも、なんといっても「おなら」は生理現象。自分の意志でコントロールすることは無理。ですから、無理をしたり、我慢したりするのは、ほどほどにしておくべきですね。
 
 それにしてもチョット不思議なのは、おならをしたネコが、放屁の後、「知らん顔」をしてピュッと逃げ去っていくという事実。
 「マナー」なる意識をアタマの中に埋め込まれてしまった人間ならいざ知らず、なんでネコがおならをした後に、「知らん顔」するの?
 第一、ネコは自分が「おなら」をしたことについて、いったいどれほどまで自覚しているのか? 基本的に気の向くまま、好きなように行動しているネコが、ですよ。

「恥じらいを知っているネコもいるのではないか」とも考えられるけれど、それはあまりにもネコを擬人化しすぎ。
だって、「恥ずかしい行為」ということで云うなら、他にもいろいろと考えられるから。

 実はこの「知らん顔」する行動は、ネコの「転位行動」なんですね。「転位行動」とはグルーミング、すなわち「毛づくろい」行動の一つ。
 放屁の他にも、たとえば高い所から飛び降りようとして失敗したり、トイレ以外の場所でついお漏らしをしてしまった時。一瞬、その場をとりつくろう行動をとる。それがネコの「転位行動」なのだ。じっくり観察してみると、ネコが「知らん顔」をしているとき、一緒にどちらかの手が頭に上がり、チョットした手つきで毛づくろいをしているはず。
 人間も同じで、つい失敗をしてしまったときなどは、知らず知らずのうちに手で頭をボリボリ掻きむしっていた、なんてこと、あるでしょ。

 「屁をひって尻すぼむ」のは、なにも人間様だけがおこなっている専売特許ってわけではなかったんですね。(『cats』2002.9)



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