柚 だ よ り
Y U Z U C O L U M N
6月号
今月の五感散歩は、九州・大分県で体感した、雨の中の「熊野磨崖仏」です>

 
ここは九州、大分県国東半島。豊後高田市田染。
狭い山道の入り口が、のぞいています。
両側に木々がうっそうと茂り、細い道は薄暗い。左手にちょろちょろと清流が流れています。

狭い道を、一心不乱で登っていく。「仏」に逢うために。
ハアハアと息切れしてくる。「鬼が一夜で 積み上げた」という荒石積みの石段が現れました。


 





 梅雨でてらてらと光っています。大きな石がごつごつと組み合わされた石段は、足が滑ってしまい、一苦労。なんだか「修行」しているような気分になってきて。

 やっとのことで石段の終わりにさしかかり、ああ疲れたぁと、ふと顔を上げた時……、そこにいらっしゃいました。
 巨大な岩壁、まあるい頬。のんびりとした表情。
  平安末期の作といわれる熊野磨崖仏。

 
 足もとに咲き始めた紫陽花が、まるで仏に捧げられた献花のよう。

「大日如来」の頭上には、マンダラが刻み込まれていた。
6.7メートル。画面でその「巨大」さを体感していただくのはほとほと難しいのですが……
 自然の作り出した、雄壮な岩盤という素材を、上手に加工した昔の人々の手に、思いを馳せる。
 

 
 不動明王は8メートル。
 肉どりの厚い、ふんわりとした両頬。
 大きな耳。「不動明王」は、怖い顔をしているのだと思いこんできた。しかし、こんなに柔和な表情もあるのか……。  
 「不動」というのは、菩提心の揺るがないことだと聞いたことがあります。
 悪魔を降伏するために恐ろしい姿をしている、と。
 すべての障害を打ち砕き、おとなしく仏道に従わないものを無理矢理にでも導き救済するという役目を持つ不動明王が、しかしこの崖では、静かにほほえんでいました。

 修行行事とされる峰入りの荒行は、ここ熊野磨崖仏を出発点として護摩焚きを行い、5〜10日間の行に入るそうです。






色づき始めた紫陽花。



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