柚 だ よ り
Y U Z U C O L U M N
9月号
今月の五感散歩は、京都「老松」の和菓子教室です>
 

季節ごとの植物や花の形を写しとって表現する茶席菓子。
 目にも鮮やかなその色合い、細やかな造形に欠かせないのが、和菓子職人の繊細な手のひらと指先の感覚だ。

「京都では『こなし』といって小麦粉と白あんを蒸して練った素材を使います。これを粘土細工のよう伸ばしたり丸めたり。
 桜や椿、菊などの花びらや萼の形に細工します。乾燥に弱く大量生産できないため、すべて一つ一つが職人の手作りです」(有職菓子御調進所・老松の青山洋子さん)    

「こなし」の語源は「熟」。
 蒸した餡を、もみつぶし柔らかくすることを言う
「こなし足りないと口あたりが悪く、こなしすぎると腰が抜けてしまう。もっちりした歯ざわりの独特の食感を出すためには、手微妙な加減が大切です」


外側の素材「こなし」と、中に入れる「白餡」とは、ほとんど同じ色だ。
 目で見る限り、二つの素材は区別がつかない。


「触った時の質感の違い、曲げた時の折れ具合などで、即座に判別できます。また、手先だけではなく、京菓子は『耳で食べる』と言います。『唐衣』とか『飛雲』など、菓子の名前の響きを耳で楽しむ。風景のイメージを膨らませ、それから舌・味覚と食感で味わうのです」(青山さん)


  私がつくった「ききょう」。

 

 手、耳、舌をぞんぶんに使って作る。そして味わう。和菓子のことを老松では、「五感の芸術」と呼んでいる。
 

 

( 『ヨミウリウィークリー』2003.9.21号「五感は警告する 視覚編」より抜粋)

  京都・上七軒の「老松」では、和菓子教室を開催中。 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/oimatu/school.html



   新刊のお知らせ

『おしゃべりなからだ』(医学通信社 1200円)
8月8日発売。 イラスト・ワカバヤシチカ

月刊『保健診療』の人気連載エッセイ「山下柚実のだからからだだ(1〜30回)」に、新たに書き下ろしたコラム&イラスト満載。

第一章ツルルン編 ケアしてあげたいからだ
第二章うっとり編  リラックスしたいからだ
第三章ヘルシー編 もっと知りたいからだ



自分自身のカラダで直接、空間を味わうこと。経験すること。その足で走ること、歩くこと、その指で触ること、感じとること。時に、転ぶこと、膝小僧をすりむくこと。そうした体験こそが、自分の中の「カラダの引き出し」を創り出し、感覚の記憶を紡ぎ、自分自身の人生を豊かに彩ることになる――私はこの本作りを通して、はっきりと確認しました」(あとがきより)


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